問題(令和7年度問1)
| 所有者AがBに甲土地を売却し、その後にBがCに甲土地を売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、この問において、Cは背信的悪意者ではないものとする。 1 甲土地の所有権登記がAの名義のままであったとしても、Bは、Cに甲土地を売却した後は、Aに対して自己に甲土地の所有権移転登記をするよう請求することはできない。 2 Cは、甲土地の所有権移転登記を備えなければ、Aに対して自己が所有者であることを主張することができない。 3 AB間の売買契約が、BC間の売買契約締結よりも前にAにより解除されていた場合、又は、BC間の売買契約締結後にAにより解除された場合のいずれの場合であっても、Cは、甲土地の所有権移転登記を備えれば、Aに対して自己の所有権を主張することができる。 4 AB間の売買契約が、BC間の売買契約よりも前にBの強迫を理由として取り消されていた場合、又は、BC間の売買契約締結後にBの強迫を理由として取り消された場合のいずれの場合であっても、Cは、Bの強迫につき善意でかつ過失がなければ、Aに対して自己の所有権を主張することができる。 |
正解
3
解説
本問は、二重譲渡や解除・取消と第三者の保護に関する民法の規定と判例についての理解を問うものです。A→B→Cと土地が売買される場面で、Cが「背信的悪意者ではない」と条件づけられているため、第三者保護の原則が中心的な論点となります。
肢1→誤り
BはCに転売した後でも、Aに対して所有権移転登記請求をすることができます。これは、BがCに所有権を移転するためにAから登記を受ける正当な利益を有しているためです。最高裁昭和46年11月30日判決も、転売後であってもBの登記請求権を肯定しています。
肢2→誤り
CはBから土地を譲り受けた時点で所有権を取得します。所有権の取得自体に登記は不要であり、登記はあくまで対抗要件です。
ここで問題となるのは、Aが民法第177条にいう「第三者」に当たるかどうかです。最高裁昭和39年2月13日判決は、「民法177条にいう第三者とは、当事者及びその包括承継人以外の者をいう」と判示しています。したがって、AはAB間の売買契約の当事者であり、第三者には該当しません。
よって、Cは登記がなくてもAに対して自己の所有権を主張することができます。
肢3→正しい
①BC間契約締結前にAB間契約が解除された場合
最高裁昭和35年11月29日判決は、不動産売買契約が解除され、その所有権が売主に復帰した場合、売主はその旨の登記を経由しなければ、契約解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し所有権の取得を対抗できないとしています。よって、CがBから土地を譲り受け、所有権移転登記を備えれば、解除の事実にかかわらずAに対して所有権を主張することができます。
②BC間契約締結後にAB間契約が解除された場合
契約解除に伴い原状回復が行われることになりますが、第三者の権利を害することはできません(民法第545条)。よって、Cが所有権移転登記を備えれば、Aに対して所有権を主張することができます。
したがって、解除の先後を問わずCは登記を備えればAに対抗することができますので、本肢は正しい記述です。
肢4→誤り
①BC間契約締結前にAB間契約が強迫により取り消された場合
判例(大審院昭和17年9月30日判決)は、取消後に登場した第三者との関係を二重譲渡と同視し、登記を備えた第三者を保護しています。したがって、Cが登記を備えればAに対して所有権を主張できると解されます。(Cが善意無過失であるかどうかは問われません。)
②BC契約締結後にAB間契約が強迫により取り消された場合
強迫による意思表示の取消しは、その取消し前に登場した第三者に対抗することができます(民法第96条第3項:詐欺と異なり、善意無過失の第三者にも対抗可)。このため、Cは所有権移転登記を備えたとしても、Aに対して所有権を主張することはできません。
したがって、取消の場合にはCが常に保護されるわけではなく、取消の先後によって結論が異なりますので、本肢は誤りです。
