宅建業者が媒介として売買契約に関与する場合、契約不適合責任は売買契約の当事者である売主が負うものであり、媒介業者が直接その責任を負う立場にはありません。これは民法上の原則であり、媒介業者が物件の所有者ではないことから、契約不適合に関する法的責任の所在は売主にあります。
とはいえ、媒介業者には依頼者(売主または買主)に対する調査・説明義務が課されており、物件の現況確認や売主からの情報提供に基づく説明を誠実に行うことが求められます。通常は目視による確認で足りるとされていますが、すべてのケースでそれが十分とは限りません。
特に以下のような状況では、媒介業者にも積極的な調査と説明・注意喚起の義務が生じます。
- 通常の注意を払えば、瑕疵の存在を容易に認識できた場合
- 売主の発言や物件の状況、過去の取引履歴などから、瑕疵の可能性を強く疑わせる事情がある場合
これらの義務を怠った場合、媒介契約に基づく債務不履行責任や、不法行為責任を問われる可能性があり、媒介業者としての信頼性や法的安全性に大きな影響を及ぼします。したがって、慎重かつ誠実な対応が不可欠です。
このような説明責任を果たすうえで、媒介業者が活用すべき有効な手段が「告知書」です。告知書とは、宅地や建物の過去の履歴や性状など、売主や所有者しか把握し得ない事項について記載してもらう書面であり、国土交通省もその積極的な活用を推奨しています。
告知書を活用することで、買主への情報提供が充実し、契約不適合に関する認識の齟齬を防ぐことができます。これは将来の紛争予防にもつながり、媒介業者としての説明責任を果たすうえで非常に有効です。
なお、告知書を買主に渡す際には、「売主等の責任において作成されたものである」ことを明示する必要があります。媒介業者は、売主との協力体制を構築し、告知書の取得・交付を通じて、情報の非対称性を緩和し、信頼性の高い取引を支援することが求められます。
媒介業者は「契約不適合責任の当事者ではない」という立場に安住するのではなく、説明責任の実務を通じて、取引の透明性と信頼性を高める役割を果たすことが、今後の業界における評価と継続的な取引につながります。
