囲い込みとは、宅地建物取引業者(宅建業者)が自社の利益を優先し、売主・買主双方の媒介による手数料獲得(いわゆる「両手仲介」)を目的として、物件の取引状況を故意に隠し、他業者からの申込みや内覧希望を不当に遮断する行為を指します。これは売主の意向に反するだけでなく、取引の透明性を損ない、市場の公正を著しく害する重大なコンプライアンス違反です。
囲い込みによって生じる消費者の不利益は深刻です。売主にとっては、物件情報が広く流通しないことで購入希望者が限定され、売却価格の低下や売却期間の長期化につながります。買主側も、希望物件の情報が得られず、適正な選択機会を奪われることになります。こうした情報の非対称性は、宅建業者の信義誠実義務に反する行為とみなされ、業界全体の信頼性を損なう要因となります。
宅地建物取引業法(宅建業法)では、媒介契約を締結した宅建業者に対し、契約の目的物について売買または交換の申込みがあった場合、遅滞なく依頼者に報告する義務が課されています。この報告義務は、依頼者が適切な判断を行うための基本的な情報提供責任であり、囲い込みによってこれを怠ることは法令違反となります。
2025年1月1日より、宅建業法施行規則が改正され、囲い込み防止を目的としたレインズ(指定流通機構)への取引状況の登録義務が強化されました。これにより、宅建業者は専属専任媒介契約または専任媒介契約を締結した物件について、レインズのステータス管理機能を最新の内容に保つことが義務付けられます。
ステータスは以下の3区分で表示されます:
- 「公開中」
- 「書面による購入申し込みあり」
- 「売主都合で一時紹介停止中」
これらのステータスが実際の販売状況と異なる場合、たとえば「公開中」にもかかわらず「購入申し込みあり」などと虚偽の登録をしていた場合には、宅建業法第65条第1項に基づき指示処分の対象となります。
指示処分は行政による是正命令であり、従わない場合は業務停止処分や免許取消処分に発展する可能性もあります。さらに、処分を受けた業者の情報は国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」に登録され、最大5年間公開されるため、企業の信用や営業活動に大きな影響を及ぼします。
宅建業者は、媒介契約に基づく報告義務を遵守し、囲い込み行為を厳に慎むとともに、依頼者の利益を最優先に考えた公正な対応を徹底することが求められます。2025年以降は、レインズの登録内容と実態が一致しているかを常に確認し、登録証明書の交付とステータス更新を確実に行うことが、法令遵守と信頼構築の両立に不可欠です。
