不動産特定共同事業は、事業参加者(投資家)から資金を集め、その資金で不動産を取得・運用し、収益を分配する仕組みです。
投資型の事業であることから、広告は参加者の判断に大きな影響を与えるため、事業者には制度に即した適正な表示と誤認防止への配慮が求められます。
宅建業とは異なる規制体系のもと、事業の性質に応じた広告管理が重要となります。
これは単なる表示技術の問題ではなく、事業者のコンプライアンス姿勢が問われる領域です。
本コラムでは、不動産特定共同事業法に基づく広告規制の主要ポイントを整理し、実務上の注意点を解説します。
広告開始時期の制限
不動産特定共同事業者は、宅地造成や建物建築に関する工事が完了する前であっても、開発許可、建築確認その他の法令上の許可等が取得されていなければ広告を開始できません(不動産特定共同事業法第18条第1項、不動産特定共同事業法施行令第7条)。
広告開始前には、必ず許認可の取得状況を確認し、社内でのチェック体制を整備する必要があります。
こうした事前確認は、広告コンプライアンスの基本動作といえます。
取引態様の明示
広告を行う際には、以下の情報を明示することが義務づけられています(不動産特定共同事業法第18条第2項)。
- 自社が契約の当事者なのか、代理人なのか、媒介者なのか
- 不動産特定共同事業契約の種別(任意組合型、匿名組合型、賃貸型等)
これにより、投資家が事業者の立場や責任範囲を正しく理解できるようにすることが目的です。
曖昧な表示は、誤認を招き、法令違反と評価される可能性があります。
表示の正確性は、コンプライアンス対応としての情報提供義務の一環です。
誇大広告等の禁止
不動産特定共同事業者は、その業務に関して広告をするときは、不動産取引による利益の見込みその他施行規則第37条に掲げる事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならないとされています(不動産特定共同事業法第18条第3項)。
例えば、以下のような表示は誇大広告等に該当する可能性があります。
- 確実に利益を得られるかのように誤解させて、投資意欲を不当に刺激するような表示
- 利回りの保証若しくは損失の全部若しくは一部の負担を行う旨の表示、又はこれを行っていると誤解させるような表示
- 根拠を示さずに、不特事業に係る販売の実績、内容又は方法が他の不特事業者よりも著しく優れている旨を掲げる表示
- 社会的に過剰宣伝であるとの批判を浴びるような表示
これらの表示は、投資判断を誤らせるリスクが高く、不動産特定共同事業法違反として行政指導や処分の対象となる可能性があります。
広告担当者は、コンプライアンスの視点から「表示の妥当性」「根拠の有無」「誤認リスク」を常に検証する姿勢が求められます。
不動産特定共同事業における広告は、投資判断に直結する情報提供の場であり、事業者の誠実さと責任感が問われる領域です。
表示の一言一句が、投資家との信頼関係を築くか、制度への不信を招くかを左右します。
だからこそ、事業者は法令遵守だけでなく、誤認防止・根拠提示・社内審査体制の整備といったコンプライアンス対応を徹底することが不可欠です。
広告は集客手段ではなく、投資家との信頼関係を築くための最初の接点であることを忘れてはなりません。
