在日外国人への不当な取扱いは重大なコンプライアンス問題

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宅地建物取引業者(宅建業者)は、国籍・出身地・在留資格・民族的背景などを理由に、物件の紹介や契約申込みを拒否するような不当な取扱いを行ってはなりません。
言語や文化の違いを理由に取引を制限することは、差別的取扱いに該当する可能性があり、宅建業者として厳に慎むべき行為です。
すべての申込者に対して公平かつ誠実な対応を行うことは、宅地建物取引業法上の信義誠実義務の実践であると同時に、企業の社会的責任(CSR)としても極めて重要な姿勢です。

外国人を理由とした取引拒絶は違法か?

日本は以下の国際条約に批准しています。

  • 国際人権規約(自由権規約)
  • 人種差別撤廃条約

また、日本国憲法第14条では「法の下の平等」が定められており、人種・国籍・出身等による差別的取扱いを受けない権利が保障されています。
この平等原則は、特段の事情がない限り外国人にも類推適用されると解されています。
もっとも、これらの条約や憲法は民間の契約関係を直接規律するものではありません。
しかし、民法においても以下のような観点から、差別的取扱いが違法と評価される可能性があります。

  • 信義誠実の原則
  • 不法行為の違法性判断

したがって、宅建業者や不動産所有者が「外国人であることのみ」を理由に売買・賃貸の申込みを拒絶した場合、差別的行為とみなされ、損害賠償請求等の法的責任を問われる可能性があります。

宅建業者は、国籍や出身を理由とした取引拒絶が、法令遵守・社会的責任・企業の信用に関わる重大な問題であることを認識し、対応にあたっては慎重かつ公正な判断が求められます。

  • 言語支援(通訳・多言語資料の提供)
  • 文化的配慮(生活習慣や制度理解の差異への対応)
  • 説明の工夫(専門用語の排除、視覚資料の活用)
  • 記録の保全(説明履歴・対応経緯の記録)

これらは単なる接客マナーではなく、宅建業者としてのコンプライアンス対応であり、CSRの実践でもあります。
企業が社会的責任を果たすとは、法令を守るだけでなく、社会的弱者や多様な背景を持つ人々に対して公平な機会を提供することです。
不動産業界においても、外国籍の居住者が安心して住まいを探せる環境を整えることは、地域社会への貢献であり、企業の持続可能性を支える基盤となります。

在日外国人への不当な取扱いは、法的リスクだけでなく、企業の社会的評価や信頼にも直結する重大な問題です。
宅建業者は、法令遵守とCSRの両立を意識し、公平・誠実な対応を徹底することが、業界全体の信頼性向上と持続可能な経営につながります。