「説明したつもり」がコンプライアンス違反になる理由

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宅地建物取引業(宅建業)において、重要事項説明は単なる法定手続きではありません。
それは、顧客の意思決定を支え、企業の信頼を築くための「説明責任の実践」であり、コンプライアンス対応の核心でもあります。
国土交通省や都道府県の宅地建物取引業法主管部局が対応した苦情・紛争相談の中でも、「重要事項説明等(不告知を含む)」が最も多い原因となっており、説明の不備がトラブルの主要因であることは明らかです。

重要事項説明の不備は、単なる言い忘れではなく、調査不足・調査ミスに起因することが多く、その背景には宅地建物取引士(取引士)の知識不足・理解不足があります。
取引士には、以下のような姿勢が求められます。

  • 常に最新の法令・制度を把握し、実務能力を磨くこと
  • 知識を定期的に更新し、現場で活かせるようにすること

また、宅地建物取引業法(宅建業法)に列挙された説明項目は「最低限」であり、条文に明記されていない事項でも、顧客の判断に影響を与える可能性がある場合には、宅建業として説明責任を果たす必要があります。

宅建業法では、重要事項について「書面を交付する」だけでなく、取引士による説明が義務づけられています。
この「説明」とは、単なる情報提供ではなく、相手に内容を理解させることを目的とした行為です。
つまり、書面を読み上げるだけでは不十分。
相手が「わかった」と感じられる状態に導くことが、説明責任の本質です。

  • 専門用語を避け、平易な言葉で説明する
  • 図面・写真などを活用し、視覚的に理解しやすくする
  • 相手の反応を見ながら、説明のペースを調整する
  • 疑問や不安にはその場で丁寧に対応する
  • 最後に「ご理解いただけましたか」「ご不明点はありませんか」と確認し、理解状況を記録に残す

これらの対応は、コンプライアンスの実践であり、顧客との信頼構築の第一歩です。

重要事項説明は、法令遵守のための儀式ではなく、顧客の意思決定を支える説明責任の場です。
「説明したか」ではなく、「理解されたか」を基準に対応することが、宅建業としての信頼を守る力になります。
営業担当者・取引士一人ひとりが、制度と実務の接点を理解し、コンプライアンスを軸とした説明力を磨くことが、トラブルを防ぎ、信頼を育てる最も確実な方法です。