宅地建物取引業者(宅建業者)の広告活動は、紙媒体だけでなく、Webサイト・ポータルサイト・SNS・動画配信・メールマガジンなど、あらゆるデジタル媒体に広がっています。
しかし、媒体が何であれ、広告である以上は法令の規制対象です。
宅地建物取引業法(宅建業法)・不動産特定共同事業法・金融商品取引法・不当景品類及び不当表示防止法(景表法)など、複数の法令が関係し、コンプライアンス意識の欠如が即座にリスクにつながる領域でもあります。
インターネット広告やSNS投稿も、宅建業法や景表法の規制対象です。
表示内容が事実と異なる場合や、誤認を招く表現がある場合は、「誇大広告」「虚偽表示」として行政処分の対象になります。
「紙じゃないから大丈夫」「個人の投稿だから問題ない」といった認識は通用しません。
すべてのデジタル媒体が広告としての責任を問われる可能性があることを、営業担当者は理解しておく必要があります。
「おとり広告」とは、売る意思のない物件を掲載し、実際には他の物件に誘導する行為です。
表示規約では、以下のようなケースが該当します。
- 物件が存在しないため、実際には取引できない表示
- 物件は存在するが、取引の対象にならない表示
- 物件は存在するが、取引する意思がない表示
故意に掲載するのは論外ですが、「成約済みの物件をネット上から削除せず放置していた」といったケースも結果的に「おとり広告」と判断されることがあります。
宅建業法違反・景表法違反として処分対象になる可能性があるため、広告の更新管理も重要なコンプライアンス対応です。
また、ステルスマーケティング(ステマ)と呼ばれる「広告であることを隠して宣伝する行為」にも注意が必要です。
たとえば、営業担当者が個人のSNSアカウントで「おすすめ物件」として自社物件を紹介しながら、広告であることを明示しない場合、景表法違反と判断される可能性があります。
- 「個人の感想」と見せかけて、実は業務として投稿している
- インフルエンサーに報酬を支払い、広告であることを伏せて紹介させる
- 「口コミ風」「体験談風」の投稿で、広告であることを明示しない
こうした投稿が「ステマだ」と批判され、SNS上で炎上することで、企業イメージが大きく毀損するリスクもあります。
営業担当者は、「これは広告としての責任がある発信か?」という視点を常に持つことが求められます。
宅地建物取引業における広告活動は、単なる集客手段ではなく、法令遵守と信頼形成の両立が求められる業務です。
ネット広告やSNS投稿は、気軽に発信できる一方で、誤解や炎上のリスクも高く、コンプライアンス違反が即座に企業全体の信用に影響する領域です。
営業担当者一人ひとりが、広告の責任と制度的背景を理解し、日々の発信に活かすことが、信頼される宅建業者への第一歩です。
