誇大広告・虚偽表示のリスクとコンプライアンス

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不動産広告は、物件の魅力を伝える重要な手段です。
しかしその表現が事実と異なっていたり、実態以上に優良・有利であるかのように見せかけていた場合、宅地建物取引業法(宅建業法)違反として処分の対象となる可能性があります。
広告は「集客のためのツール」であると同時に、「信頼を守るための責任領域」でもあり、コンプライアンスの視点が不可欠な業務です。

宅建業法では、宅地建物取引業者(宅建業者)が広告を行う際に、以下のような表示を禁止しています(宅建業法第32条)。

  • 著しく事実に相違する表示
  • 実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させる表示

これは、消費者が広告を見て誤った判断をしないよう、表示の正確性と誠実性を確保するための規定です。
「誇大広告等」には、売る意思のない物件を掲載して他の物件に誘導する「おとり広告」や、存在しない物件を掲載する「虚偽広告」も含まれます。
広告媒体は、新聞折込・チラシ・雑誌・テレビ・ラジオ・インターネットなど、種類を問いません。
違反した場合は、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(またはこれらの併科)という罰則が科される可能性があります。
こうしたリスクは、広告コンプライアンスの不備として、企業全体の信頼を揺るがす要因にもなります。

誇大広告の対象となる項目は、①所在、②規模、③形質、④現在または将来の利用制限、⑤現在または将来の環境、⑥現在または将来の交通・利便性、⑦代金・借賃などの対価や支払方法、⑧金銭の貸借あっせんの有無や条件です。
これらの項目について、事実と異なる表示や誤認を招く表現がないか、コンプライアンスの観点から慎重に確認する必要があります。

「著しく事実に相違する表示」とは、広告の内容と実際の事実が大きく異なり、一般の購入者が事実を知っていれば当然に誘引されないような表示を指します。

  • 市街化調整区域の物件を「市街化区域」と表示
  • 築10年の建物を「築1年」と表示
  • 農地を「宅地」として表示

これらはすべて「虚偽広告」に該当し、処分対象となる可能性があります。
広告コンプライアンスの基本は、事実に基づいた誠実な表示です。

「著しく優良・有利と誤認させる表示」とは、物件の実態以上に魅力的に見せかけ、専門知識のない一般購入者を誤認させる程度の表示を指します。

  • 「駅まで1kmの好立地」と表示しているが、実際の道のりは4km
    → 直線距離では1kmでも、実際のアクセスが大きく異なる場合は「誇大広告」に該当

こうした表示は、意図的でなくても結果的に消費者を誤認させるため、広告作成時には「実際の利便性」を正確に伝える必要があります。
営業現場における広告コンプライアンスの実践力が問われる場面です。

不動産広告は、物件の魅力を伝えるだけでなく、企業の信頼を左右する重要な接点です。
誇大広告や虚偽表示は、集客どころか、行政処分・訴訟・評判リスク・取引停止など、重大な影響をもたらします。
営業担当者・広告担当者は、「この表現は誤認を招かないか?」「事実と一致しているか?」という視点を常に持ち、コンプライアンスを軸とした広告表現を心がけることが、信頼される宅建業者への第一歩です。